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高松高等裁判所 昭和43年(ラ)82号 決定 1968年11月19日

抗告人 久保美雅子

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は、本件抗告の趣旨として、前記決定の取消を求め(本件抗告申立書に、移送決定の取消を求めるとあるのは、前記決定の取消を求める趣旨であると解される。)、その抗告の理由は要するに、前記損害賠償請求事件は調停に親しむべき事案ではないのに高知地方裁判所が当事者の意見も聞かずにこれを高知家庭裁判所の家事調停に付する旨の決定をなしたことは違法であるというのである。

そこで、本件抗告の適否について検討すると、本件記録によれば、高知地方裁判所は、梅原秀喜(原告)と抗告人(被告)間の同庁昭和四三年(ワ)第四六二号損害賠償請求事件を、家事審判法第一七条所定の家庭に関する事件に該当するものと認めて、同年一〇月七日の第一回口頭弁論期日において、抗告人欠席のまま、同法第一九条第一項に基づき右事件を職権で高知家庭裁判所の家事調停に付する旨の決定をなしたことが明らかであるところ、右同条に基づく決定に対しては、家事審判法、同規則のいずれにも不服申立を許す旨の規定がなく、また右決定は調停手続中の裁判ではないから同法第七条に基づく非訟事件手続法第二〇条の準用もなく、結局右決定に対しては不服申立の途がないものといわねばならない。

そうすると、本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、抗告費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用の上、主文のとおり決定する。

(裁判官 合田得太郎 奥村正策 林義一)

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